フーリエ級数展開からフーリエ変換~非周期関数への拡張へのイメージ
投稿日:2021年11月17日 更新日:
周期を持ったあらゆる波(関数)は、さまざまな周波数のサイン波とコサイン波を足し合わせることによって表現することができ、それぞれのサイン波とコサイン波の大きさ(係数)がフーリエ係数です(前の記事参照)。 これを周期性がない非周期関数へと拡張したものがフーリエ変換となります。 つまり、周期関数におけるフーリエ級数展開とフーリエ係数の関係は、非周期関数においてはフーリエ逆変換とフーリエ変換に対応しています(下図)。
本記事では、以下の内容を取り扱っていきます。
- フーリエ係数とフーリエ変換の式のどこが違うのか。
- フーリエ係数からフーリエ変換への拡張はどのように行うのか。
フーリエ係数とフーリエ変換の比較
繰り返しになりますが、周期関数でのフーリエ級数展開とフーリエ級数の関係は、非周期関数でのフーリエ逆変換とフーリエ変換が対応しています(上図)。 フーリエ級数展開・フーリエ逆変換の式は時間領域の関数であり、さまざまな周波数のサイン・コサインの和で任意の波が表現できることを示しています。 フーリエ級数・フーリエ逆変換の式は周波数領域の関数であり、各周波数成分の大きさを示しており、スペクトルとも呼ばれます。
周期関数と非周期関数での数式の主な違い
- (時間領域での比較)フーリエ級数展開・フーリエ逆変換の違い:シグマか積分か
- (周波数領域での比較)フーリエ係数・フーリエ変換の違い:積分範囲
フーリエ変換の導出:周期関数から非周期関数への拡張
フーリエ係数 / フーリエ級数展開の式からフーリエ変換 / フーリエ逆変換の式を導出してみます。考え方は、周期関数の周期を無限大に持っていくことで、非周期関数へと拡張します。 導出の流れ、および要点は下図の通りになります。
前知識:周期関数(フーリエ係数 / フーリエ級数展開)の特徴
周期 $T$ の周期関数 $f(t)$ はフーリエ級数展開によって、周期 $T/n$ $(n = \cdots 0, 1, 2, \cdots)$ のサイン・コサイン波の足し合わせで表現できます。 このとき、$n$ は整数のみに限られます。 なぜなら、もし $n$ が整数でない場合(たとえば0.9や1.1など)、そのときのサイン・コサインは時間間隔が周期 $T$ 離れた場所同士での値が異なるためです(下図:右)。 周期 $T$ の関数 $f(t)$ は、時間間隔が $T$ 離れた場所での値同士が同じなので、同様に時間間隔が $T$ 離れた場所での値が等しいサイン・コサイン、つまり $n$ が整数の成分のみがこの周期関数に含まれるということになります(下図:左)。 このことから、周期関数に含まれるサイン・コサインの周期(周波数)は離散的であると言えます。
手順1:周期を周波数間隔へ変数変換
ここでは便宜上、周期関数(フーリエ係数 / フーリエ級数展開)の式の中に存在する変数である、周期 $T$ を周波数間隔 $\Delta \nu$ に変換しておきます。 変換の際には以下の関係式を使用します。
$$\displaystyle T = \frac{1}{\Delta\nu}$$
この関係式は下図:右のような、周期関数の周波数領域(フーリエ係数vs. 周波数)のグラフを見ると理解できます。 周期が $T$ の関数は、離散的に周波数 $n\nu = n/T$ $(n = \cdots 0, 1, 2, \cdots$ ) の成分を持つのでFig. 4(右)のようなスペクトルとなり各周波数成分の間隔 $\Delta \nu$ は、$\nu (= 1/T)$ であるので、まとめると $T = 1/\nu = 1/\Delta$ の関係式が成り立つということがわかります。
手順2:周波数間隔を0へ(周期を無限大へ)
周期関数を非周期関数へ拡張し、フーリエ変換 / フーリエ逆変換の形へと変換する上で、このステップが要となります。 関数の周期 $T$ を無限大に引き延ばす(周波数間隔 $\Delta \nu$ をゼロに圧縮する)操作を行います(下図)。 時間領域でみると、周期関数の1周期部分を $-\infty$ から $\infty$ へ引き延ばすことにより、波形の繰り返しがなくなるため非周期関数になっていることがわかります。 周波数領域でみると、離散的に含まれる周波数同士の間隔 $\Delta \nu$ がゼロへと圧縮され、離散的であった周波数成分が連続的になります。
まとめ:導出の流れ
フーリエ級数展開 / フーリエ係数の式からフーリエ逆変換 / フーリエ変換の式を導出する流れをまとめると下図の通りとなります。
- フーリエ級数展開の式からスタート
- $\Delta \nu = 1/T$ の関係を使って、$T$ を $\Delta \nu$ の変数で置き換える
- フーリエ係数 $C_n$ の中身を展開(変数 $t$ の代わりに $\tau$ を使用)
- フーリエ係数の中身にあった $\Delta \nu$ を式の最後に移動
- 周波数間隔 $\Delta \nu$ をゼロへ圧縮(周期 $T$ を無限大へ引き延ばし)
- フーリエ逆変換 / フーリエ変換の式へ
シグマから積分へ
周波数間隔 $\Delta \nu \to 0$(周期 $T \to \infty$)により、なぜシグマが積分に置き換わるかというと、下の関係があるためです。
$$\displaystyle \lim_{\Delta x\to 0}\sum_{k=0}^{n-1}f(k\Delta x)\Delta x = \int_0^a f(x) dx$$
関数 $f(x)$ の面積を求めるときに、短冊を敷き詰める方法(下図:上)から、その短冊の幅 $\Delta x$ を狭くしていく(下図:下)イメージです。 短冊1つの面積は $f(k\Delta x)\times \Delta x$ $(k=0, 1, \cdots, n-1)$ なので、これの和(=シグマ)が大雑把な関数の面積となり、この短冊幅を細かくしていくと関数の面積を求められる=積分になります。